人工知能で明日のビジネスは変わるのか?

第10回 人工知能をビジネスに活用するために意識しておきたいコト

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さて私が思うに,そろそろ人工知能(やFinTech)向けの投資はピークから下り坂に向かおうとしています。ここでいう投資はシードやアーリーなどの,いわゆるベンチャー投資のことです。その代わりこれから増えるのが,企業による設備投資や,国による投資などでしょう。

労働集約と設備集約の観点で観た人工知能

それはさておき,人工知能を労働集約と設備集約という視点で見てみましょう。

たとえば,自動車や家電などは,ロボットの導入などで生産ラインが労働集約から設備集約に移行をしてきました。

単純労働は機械にシフトしてきたわけです。

とはいえ,以前のiPhoneが燕三条の職人によって磨かれていたように,機械には任せられないような仕事というのもあります。

これをデータ処理に置き換えると,人工知能の位置付けというものがよくわかります。この連載の第3回「人間を超える処理」⁠隈なくする処理」という分類をしましたが,人間でもできるが機械(人工知能)でもできる処理は,どんどんそっちにシフトしていくのは全く自然なことだといえます。

データ処理の自動化はますます進む

労働集約から設備集約とまでは言いませんが,電卓を使うようになったり表計算ソフトを使うようになったり会計ソフトを使うようになったりと,本質的には同じです。設備集約にしたほうが費用対効果が高くなるなら,そうするのは経営として自然な流れというか妥当な判断です。

ただ人工知能が,ごくごく一部では人間を超えるような処理を実現しているので,そのへんがごっちゃになっているのが人工知能ブームの本質です。

いっそのこと人間を上回っているものを人工知能って呼んで,そうでないもの(単に設備集約になっただけのもの)は自動計算と呼んだらいいんじゃないでしょうか。

ということで,今後データ処理という仕事の大部分はどんどん機械に置き換えられていくことでしょう。

これらの自動化に人工知能ブームは関係ない?

ただ,ここで重要なのは(重要でもないですが)⁠⁠それは人工知能ブームがなくても起こり得た」ということです。でも「当社のビジネスは自動計算への設備集約です!」だと,投資してもらえないですよね笑 まあそれは投資する側が悪いのですが。

そうなると,技術の進歩と計算コストの低下とともに,置き換えられる仕事はどんどん増えてはいくわけです。すると,必要な労働の総量が減っていく場合,総人件費も減ってしまうのではないか,というのがいわゆる人工知能の普及に対する恐怖やアレルギーの原因の1つです。

これから大事な仕事とは~労働時間とアウトプットが比例しない仕事

とくにこの連載を読んでいる人などは十分わかっていることだと思いますが,労働時間とアウトプットが比例しないことなどは,たくさんあります。そして設備集約に置き換えられるのは,むしろ「労働時間がアウトプットに比例する仕事」なのです。

ということは設備集約への移行が進めば進むほど,人間に残された仕事というか設備集約に移行できない仕事は,⁠労働時間とアウトプットが比例しない」ものの比率が増えていくということです。

生産の機械化では,労働のアウトプットの評価方法というのは,本来変わるべきだったのですが置いてけぼりにされた面がありました。そして今,人工知能ブームによる処理の自動化という設備集約の波が訪れていますが,今度こそは労働の成果と対価をもっと正しく評価する方法を取り入れないと,どんどんおかしなことになっていってしまうでしょう。

いわゆる受託の欠点,つまり工数が見積もりの根拠,というのはIT業界における典型的な事例です。

たとえばプログラミングにおいて,前の日5時間かかったことが翌日15分で解決,なんていうのはまったく珍しいことではありません。そうした仕事こそ,設備集約には移行できない,人間に残されたというかやるべき仕事であると言えます。

人工知能をビジネスで活用するには,活用するテクノロジーだけではなく,それを取り巻く労働環境も絡めて考えていく必要があります。

そのためにはエンジニアや研究者だけではなく,企業の経営者や国も,制度の見直しなどに取り組まないといけないということです。

冒頭で書きましたが,人工知能へのベンチャー投資というのはもう下り坂に入りつつあり,これからは企業による設備投資や国による投資というフェーズに移りつつありますが,それはそれで良いですが(そしてあまりうまくいかない気もしますが)⁠そうした制度の見直しへの取り組みをするほうが有益なのではないか,最低でも同時に行わないといけないのではないか,というのが,ちょっと冷めた目で人工知能ブームを見たときに感じる側面です。

人工知能時代に置ける人間と人間の仕事の評価とは?

そうした労働環境や成果の評価が適切に見直されれば,人工知能の進化や成果というのは勝手に出てくるんではないでしょうか。長い時間働くことばかりが評価される,では,正直やる気が起きないですよね。

労働時間が評価されるべきなのは,⁠その労働時間に人間が取り組むべき意味がある」ときなのではないかと思います。

技術的におもしろいことであればエンジニアは自然とモチベーションが上がる,というのは,それはそれで間違いないのですが,それを当て込むのはエンジニアを馬鹿にしていますよ。⁠当社はこんな技術的に新しい取り組みをしています(ので優秀なエンジニア大歓迎です)⁠というアピールを見かけることがありますが,それは単なるモチベーションの搾取です。

日本では理系出身のほうが生涯年収が低いと言われますが,それはこうしたモチベーションの搾取が大きな原因だと,私は思います。

今回は人工知能をビジネスに活用する,という視点からはちょっと外れましたが,ビジネスに活用する際に気をつけないといけないことというか気になることについて,書いてみました。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。ライブドア(現LINE)のデータホテルを構築・運営の後,海外にてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO-ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

株式会社ゼロスタート:https://zero-start.jp/

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