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第156回 Fuji Rock Festival (YouTube Channel),Portal from Facebook,Domino’s Paving for Pizza

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ピザのためなら,道路も直します

Domino's Paving for Pizza

アメリカのDomino's Pizzaによる,ピザを家庭まで安全に届けることを目的とした新しいプロジェクト「Paving for Pizza(ピザのための舗装)⁠のウェブサイト,⁠Domino's Paving for Pizza』です。

図3 Domino's Pizzaによる新プロジェクト「Paving for Pizza」のウェブサイト『Domino's Paving for Pizza』

図3 Domino's Pizzaによる新プロジェクト<wbr/>「Paving for Pizza」<wbr/>のウェブサイト<wbr/>『Domino's Paving for Pizza』<wbr/>

credit:Crispin Porter & Bogusky

道路の穴や亀裂,出っ張りは,車を運転しながら家までピザを運ぶ場合に,どうしようもないダメージ(チーズが片側に滑り込んだり,上部のトッピングの崩れ,箱がひっくり返る)を与えることがあるが,Domino's Pizzaはそれを見過ごすことはできないため,ピザを車でスムーズに運べるように,全米の50州すべての悪い道路を舗装するというプロジェクトです。

「Paving for Pizza」の内容を紹介した動画

ウェブサイトからは,訪れたユーザーが道路の修復を行って欲しい町を申請できるようになっており,申請された中から,Domino's Pizzaが,穴を修復するための助成金を町に提供するという仕組みです。

マスコミに取り上げられたり,ソーシャルメディアで話題になるなど,非常に大きな注目を集めたこのプロジェクトでは,プロジェクト開始以降,アメリカの50の州すべてから13万件を超える助成金の申請を受けています。最終的には,2018年末までにアメリカ全土の50州すべてで少なくとも1つの舗装プロジェクトを実施することを発表しています。

なぜ,こうしたキャンペーンが行われるのか?

道路を舗装する助成金を獲得した町には,助成金だけでなく,道路を舗装するときに使用できる道具箱(舗装作業中に使用するステンシル,重機に貼るステッカー,舗装付近の道路に設置する看板,舗装を行う作業員たちがDomino's Pizzaでの注文で使えるギフトカードなど)が提供されています。ウェブサイトでは,すでに道路の補修が行われた「テキサス州バートンビル」⁠カリフォルニア州バーバンク」⁠ジョージア州アテネ」⁠デラウェア州ミルフォード」の4箇所での作業の様子がレポートされていますが,⁠用意された遠具は絶対に使用しなければならない⁠という決まりごとがないにもかかわらず,道路の補修の行われた多くの都市では,舗装中にドミノから提供されている資産を使用しています。

図4 Domino's Pizzaの修復作業が行われた町の一つ,テキサス州バートンビル。提供された道具を活用しながら,道路の補修がなされていることがよく分かる

図4 Domino's Pizzaの修復作業が行われた町の一つ,<wbr/>テキサス州バートンビル。提供された道具を活用しながら,<wbr/>道路の補修がなされていることがよく分かる

「Paving for Pizza」キャンペーンが行われているアメリカは,合衆国(50の州と連邦区の連合体)のため,地方自治体や州政府の予算は国家予算とは別会計です。自治体の予算は,少数の富裕層や地元の大企業の収める税収で成り立っていることも多く,決して余裕のある財政状態ではありません。このようなアメリカでは,地方自治体が財政破産することは珍しくありません。カリフォルニア州ストックトンやロードアイランド州セントラルフォールズ,最近の事例では,2013年のミシガン州デトロイト市の財政破綻が有名でしょう。そのため,地方自治体の予算は,まず絶対に必要な市民サービスへと回され,多少の不具合があっても問題のない道路の整備は,後回しにされることが多いのです。

「Paving for Pizza」の開始を告げるツイート。SNS上だけでなく,大手のマスコミでも取り上げられるなど,大きな話題となった。

こうした状況を利用した「Paving for Pizza」キャンペーンですが,単なる広告としての行為が全面に押し出されていれば,大手のマスコミやSNSでの話題の広がりを見せることはなかったでしょう。車社会のアメリカでどの自治体でも後回しにされている,道路を舗装して直すという「誰もがありがたいと感じる行為」を誠実に行うことで,多くの人から支持を得ただけでなく,広告以上のイメージ向上効果を発生させました。

日本企業もCSR(企業の社会的責任)の一環として,積極的に社会貢献活動を行っている団体に寄付をする事例をよく見かけます。ただし,その内容は企業の個性を生かせず,横並びの似たものばかりです。実際に様々な活動に予算と時間を費やし,積極的に活動しているにもかかわらず,世間一般には活動内容がほとんど知られていないのがその証拠でしょう。

今回,日本でも「Paving for Pizza」のようなキャンペーンが可能かどうか調べてみたところ,寄付を受ける自治体側の了解があれば,企業が寄付の使いみちを限定して,完成した物品や施設などに「企業からの寄付によるもの」であることを表示することも可能なことがわかりました。

全く同じ内容のキャンペーンが日本で起こるとは思いませんが,こうした制度をしっかりと活用しながら,社会にとっても,企業にとっても良いインパクトを与えるキャンペーンが登場することを期待しています。

というわけで,今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。