一般記事

【イベント開催連動企画】 IoTシステムをビジネスに活かす~技術者が持つべき視点とは

この記事を読むのに必要な時間:およそ 6 分

IoTシステムの技術者として必要な技術/スキル

IoTシステム自体を作り上げるためのデバイスや通信,クラウドサービスは,あと数年で十分に充足し,安価に利用できるようになると予想されます。技術面や費用面での負担が減り,ビジネスに合わせてIoTシステムを構築,運用することが,より少ない人数で実現できるようになるでしょう。このため,IoTシステム全体をセキュリティや運用面も含めて設計し,短期間で立ち上げることができる技術者は,IoTでは1つのロールモデルとなるでしょう。

そのため,IoTシステムの各要素でどのような技術やサービスがあるのかという情報を定期的にアップデートして,さらに情報だけでなく,手を動かして理解しておくことは非常に重要だと筆者は考えます。

勉強会やハンズオンセミナーに参加する

とはいえ,IoTシステムの構築には,デバイスからセキュリティまで幅広い知識と経験が必要となるため,1人でIoTシステムを作り上げ運用することは,実際には難しいでしょう。もし会社内や自分の周りに,自分の知らない知識を聞ける相手がいないようであれば,勉強会やハンズオンセミナーに出かけてみるのも1つの手です。

特にIoTと銘打ったコミュニティが実施する勉強会やハンズオンは,さまざまなバックグラウンドを持った技術者が集まることが多く,普段接している技術やスキルとは違うものを持った人と交流できるという点では,良い刺激になるでしょう。

各分野の技術/スキルを持った方と交流することで,新しい知識や知見を得られ,筆者も一技術者として成長する良い機会だと思っています。

また単に技術者としての交流だけではなく,ビジネス上のパートナーとして一緒に働いたり,IoTシステムを作ることもあり,会社を超えてコミュニティに参加し,交流してみることは,自身のキャリアパスを鑑みても有意義だと感じます図8⁠。

図8 ハンズオンの風景

図8 ハンズオンの風景

ビジネスをどう作るかという視点

またIoTシステムの技術者としては,もちろんIoTシステムそのものに対する知識やスキルは必要ですが,⁠ビジネスをどう作るのか,ビジネスモデルをどう作るのか」という所に視点を持つべきだと筆者は考えます。

例えば2010年に創業したNestという会社は,家庭用のIoTサーモスタット図9を提供しています。このサーモスタットは,センサやAIが搭載されており,ユーザの生活パターンを記録して,部屋の中にある空調機器を調整して,快適な温度を保つ仕組みが搭載されています。また遠隔地からスマートフォンでエアコンをつけたり,温度を確認することができます。

図9 Nest社のサーモスタット

図9 Nest社のサーモスタット

【出典】https://nest.com/thermostat/meet-nest-thermostat/

これだけであれば,似たような製品は日本にもあるのでは? と思いますが,Nest社はGoogleに約3,200億円で買収されており,その理由はNest社のビジネスモデルにあると言われています。

1つがNest社の製品と連携できるAPIを提供して,Nest社以外の製品と連携できるプラットフォームの提供を行っている点です。⁠Works with Nest」図10と名付けられたプラットフォームではNestAPIを使って,家庭用のさまざまな機器が連携することが可能です。またAPI経由でこれら機器を操作できるため,開発者がアプリケーションを開発することが可能となります。例えばNest API対応のウェアラブルデバイスから取ったデータを元に部屋をコントロールしたり,同様にAPI対応したLEDを使って,生活リズムに合わせて部屋の照明を調整したりすることができます。またNest社の製品をハブにして,遠隔地から家電を操作することもできます。Nest製品を持っている顧客は,Nest対応の家電を買うことでメリットを享受できるということです。

図10 Work with Nest

図10 Work with Nest

【出典】https://nest.com/works-with-nest/

こういったプラットフォームは「エコシステム」とも呼ばれ,シェアが広がると以降の製品が参入しづらくなり,支配的な基盤となります。iPhoneやAndroidのアプリストアなどはまさにその典型と言えますが,それと同様のことを家庭用のIoT機器市場で実現したのがNest社となります。

さらにNest社はもう1つ,このエコシステムを利用したビジネスモデルを持っています。それは,Nest製品を通じで家庭内の機器を操作して,電力利用を平準化するというビジネスモデルです。電力発電所は作った電気を貯めておくことができないため,常に総電気利用量よりも多い電力発電をし続ける必要があります。もし電力利用量よりも発電量が下回れば,停電が発生するからです。発電には火力や水力,原子力などが使われますが,いずれを利用するにしても発電量を急激に増やすことはできないため,予想されるピーク電力を元にして,余剰のある電力発電をしています。このため,1%でも電力発電量を減らすことができれば,発電所としては大きなコスト削減ができることになります。

Nest社は発電所と契約をして,このピークコントロールにより収益を得るというビジネスモデルを持っています。Nest社の利用数が増えれば増えるほど,ピークコントロールでコントロールできる電力量が大きくなるため,今後の展開によっては,Nest社の製品自体は非常に安価,もしくは無料で配布するような可能性もあります。

IoTでビジネスを考えた場合,自社のコスト削減や利用者の利便性向上に目が行きがちですが,IoTシステムを作りプラットフォームを提供したり,また得られたデータを使って収益を上げるところまで含めて大きなビジネスができる所が,IoTの重要な点です。そしてそれが,今多くの企業がIoTに取り組んでいる理由です。

技術者としては,単に指示されたとおりにIoTシステムを作るのではなく,ビジネスとして大きくなりそうか,ビジネスモデルとして成長しそうかという点に注目して,ときには自らが提案することも必要なスキルと言えます。

またそのようなことができるような環境を探して働くということも,技術者としてのキャリアパスとしてよいのではないかと考えます。

まとめ

『IoTエンジニア養成読本』ではIoTの概要からIoTシステムの説明,各要素の説明を1冊にまとめました。読者の方のバックグラウンドにより,既知の情報が多かったりしたとは思いますが,聞いたことのない単語や技術があったなら,ぜひ深掘りして調べてみてください。また筆者らもよく勉強会やイベントなどに参加していますので,ぜひお声掛けいただいて,聞いてもらえればと思います。

本書がIoTでシステムを構築したり,ビジネスを検討される方の一助となれば幸いです。

『IoTエンジニア養成読本』発売記念
<数量限定>IoT デバイスをすぐ作れる ハンズオンキット販売キャンペーン実施中!
  • 『IoTエンジニア養成読本』のChapter8,9に掲載されているRaspberry piとSORACOM を使ったハンズオンのパーツ一式を販売するキャンペーンを実施中。
  • 申し込みの詳細はソラコムの情報ページから,販売期間は2017年4月25日(火)正午まで。
IoT開発者のためのイベント,4/20に開催!

こちらの記事もご覧ください。

著者プロフィール

片山暁雄(かたやまあきお)

現職は(株)ソラコムで自社サービス用のソフトウェア開発/運用に携わる。前職はAWSにて,ソリューションアーキテクトとして企業のクラウド利用の提案/設計支援活動を行う。好きなプログラミング言語はJava。

Facebook:https://www.facebook.com/c9katayama
GitHub:c9katayama
Twitter:@c9katayama

バックナンバー

IoT

  • 【イベント開催連動企画】 IoTシステムをビジネスに活かす~技術者が持つべき視点とは