新春特別企画

2019年のAIアシスタント

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あけましておめでとうございます。よういちろうです。今年もよろしくお願いいたします。

昨年の年始に2018年のスマートスピーカーと題した記事を寄稿しましたが,日本において昨年はスマートスピーカーが多くの方々に利用され始めた記念すべき年となりました。テレビCMでもかなり流れていましたので,Google Home,Amazon Echo,そしてClova Waveといったスマートスピーカーをほとんどの人々が認識している状況になったと言えるでしょう。

本記事では,平成から元号が変わる記念すべき今年,AIアシスタントがどうなっていくのか,その見通しを紹介します。⁠あれ,スマートスピーカーではなくAIアシスタント?」と思うことでしょう。まずはその話から始めてみましょう。

本記事では,日本においてプラットフォーム化をすでに遂げているGoogleアシスタント,Amazon Alexa,そしてLINE Clovaを対象とします。

スマートスピーカーからAIアシスタントに

声で様々な情報を検索したりIoT機器を操作することが可能な,一昨年に日本にて華々しくデビューし,昨年普及の速度が加速したデバイス,それは「スマートスピーカー」です。特に昨年の前半にはGoogle Home,Amazon Echo,そしてClova WaveやClova Friendsの販売競争が激しくなり,プロモーションのためのキャンペーンが数多く行われていました。良く目にした言葉,耳にした言葉は,これらスマートスピーカーの製品名だったかと思います。

しかし,昨年の後半に少し事情が変わってきていたことに気がついていたでしょうか? 特にグーグルについては,Google HomeのテレビCMよりも,それ,Googleにやらせよう。というテレビCMのほうが印象に残っているのではないでしょうか? Amazonについても,LINEについても,それぞれ「Alexa」「Clova」という言葉がより印象に残るようなテレビCMであったと思います。

つまり,昨年は「スマートスピーカーの販売」から「Googleアシスタント,Alexa,Clova」といった「AIアシスタント」についてのブランディング確立に徐々に変化していた年だったのです。

声で操作する(Voice User Interface = VUIと呼ばれています)デバイスとして,スマートスピーカーは「画面を持たない」という特徴的なデバイスでした。つまり,VUIをユーザに体験してもらうためのデバイスとしては,スマートスピーカーは最適なデバイスと言えます。しかし,本当にユーザに利用してもらいたいサービスは,Googleアシスタント,Alexa,Clovaといった「AIアシスタント」です。

VUIでの操作の対象はAIアシスタントであって,スマートスピーカーはAIアシスタントにユーザがアクセスするための「数あるデバイスの中の一つ」に過ぎません。AIアシスタントのブランディングを考えていけば,スマートスピーカー自体のプロモーションが減っていくことは戦略上理にかなっていると言えるでしょう。

デバイスの多様化が加速する

さて,⁠スマートスピーカー ≠ AIアシスタント」という構図になったということは,AIアシスタントを利用できるデバイスがスマートスピーカーだけではなくなった,ということです。多くの人々は,AIアシスタントを主に以下のデバイスから利用していたと考えられます。

Googleアシスタント
  • スマートスピーカー(Google Home, Home mini, その他)
  • スマートヘッドフォン,スマートイヤホン
  • スマートフォン(Android, iOS)
  • スマートウォッチ(Wear OS)
  • スマートテレビ(Android TV)
  • スマートディスプレイ(Google Home Hub, その他)
  • 車載デバイス(Android Auto, その他)
Amazon Alexa
  • スマートスピーカー(Amazon Echo, Echo Dot, Echo Spot, Echo Plus, その他)
  • スマートヘッドフォン,スマートイヤホン
  • スマートフォン(Android, iOS)
  • Amazon Fire テレビ Stick 4K(テレビに挿すことでAlexaを利用可能)
  • スマートディスプレイ(Echo Show)
  • 車載デバイス(Echo Auto, その他)
LINE Clova
  • スマートスピーカー(Clova WAVE, Friends, Friends mini)
  • スマートイヤホン

実際に昨年中に動作実績があるデバイスの種別だけでも,上記のように多彩です。また,発表されている対応予定のデバイスも今年は登場してくることでしょう。面白いデバイスとしては,スマートリングと言えるかもしれないGoogleアシスタントが利用できる指輪が発売されます。

指がスマートフォンの代わりになる ORII - Makuake

指がスマートフォンの代わりになる ORII - Makuake

AIアシスタントを利用できるデバイスが増えれば増えるほど,そしてデバイスの種別が増えれば増えるほど,人々がAIアシスタントを利用する頻度は増えることになり,AIアシスタントから恩恵を受けられる可能性が上がります。AIアシスタントはユーザにとって「相棒」のような常に隣にいて助けてくれる存在になることが目指すべき姿だとすると,デバイスの多様性が進むほどにその状況に近づいていくわけです。

昨年はやっとスマートスピーカー以外のデバイスが出始めた年でしたが,今年はAIアシスタント対応のデバイスの種類がもっと増えます。その結果として,ユーザがAIアシスタントに触れることが可能なタッチポイントも増えます。そして,今まで「スマートスピーカー」というデバイスに興味を持っていた人々も,今年はデバイスにではなくその先にある「AIアシスタント」に興味の軸が移行していくのではないか,と考えられます。

ユーザは多彩なデバイスを使ってAIアシスタントを利用する

ユーザは多彩なデバイスを使ってAIアシスタントを利用する

(Google I/O 2018より)

「起床から就寝まで」ユーザがAIアシスタントを利用する,という環境整備が進めば進むほど,デバイスが大事なのではなく,AIアシスタントが大事になってくるからです。

著者プロフィール

田中洋一郎(たなかよういちろう)

1975年2月生まれ。業務アプリ向けの開発ツールやフレームワークの設計に携わった後,mixi Platform,LINE Platformの技術統括を行う。日本でのソーシャルアプリケーションの技術的な基礎を確立しただけでなく,メッセージングアプリにおいても世界に先駆けてBOT Platformの立ち上げを主導した。その後もプラットフォームのさらなる進化に日々チャレンジしている。趣味で開発しているChromebook向けアプリは,Google Open Source Programs Officeから評価を得ている。Google Developers Expert(Assistant, Web Technology担当)。Mash up Award 3rd 3部門同時受賞。著書『OpenSocial入門』,『開発者のためのChromeガイドブック』,『ソーシャルアプリプラットフォーム構築技法』。

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