「中の人」が語るETロボコンの魅力─何が面白いのか,何に役立つのか

第3回 ロボコンに賭けた「思い」も伝わる─ETロボコンのモデルとは?

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モデル審査

審査方法

次に,ETロボコンのモデル審査について紹介しましょう。

参加チームの作成したモデルは,実行委員会で組織されたモデル審査委員により,公正に審査されます。各審査委員は,モデル審査基準に則って各モデルの記述内容を精査し,評価点を付けていきます。すべてのチームの評価が終了した時点で,上位のモデルについてはさらに内容を精査し,最終的な評価点と順位を決定します。

審査基準

審査基準は,モデルの何を審査するのかについて記述した審査対象と,その対象をどのように評価するかを記述した審査内容から構成されます。審査基準はETロボコンのHPからダウンロードできますので,興味のある方はぜひご覧ください。

今回は,審査対象について詳しく紹介していきます。審査対象は,大きく以下の4つに分かれます。

①モデルの書き方

良いモデルであるためには,自分の考えをきちんと伝えられるモデルになっているかどうかが大切になります。まずは読んでもらえること。そのためには,決められた記法に則った上で,正確に描くこと(=正確性)が大切になります。

さらにその上で,内容を理解してもらえること。必要な図を揃えたり,わかりやすさのための工夫をすること(=理解性)が必要です。審査基準では上述の考えに則り,モデルの書き方は「正確性」「理解性」という2点に分けて評価しています。

②モデルの内容

ETロボコンでは,良いモデルとは,要求を実現するために必要な技術とそれを実現するためのソフトウェアのしくみが正しく表現されており,かつそれらが妥当であること,と考えています。すでにモデルの項で紹介したように,それぞれが「要求モデル」⁠性能モデル」⁠設計モデル」に該当します。

性能モデルに対しては,モデルから読み取れる予測性能を「要素技術」「走行戦略」の2点に分けて評価します。

設計モデルについては,ソフトウェアとしての妥当性を「機能」⁠構造」⁠振る舞い」という3つの異なる視点で評価します。さらに,記述された各モデルの内容が,相互に参照・確認(追跡)が可能か,内容が一貫しており矛盾がないかを審査します。この審査項目は「トレーサビリティ」と呼ばれています。

③追加課題

昨年の大会から,モデルのマンネリ化を防止するとともに,新たなチャレンジの場を設定するという目的の下,あらたに追加課題というものが加わりました。

「追加課題」は,数年単位で変更することを予定しており,前述した①のモデルの書き方や②のモデルの内容に比べて多少難易度が高いため,審査においてはオプション扱いである加点評価の対象としています。

昨年は,⁠並行性設計」のみでしたが,今年はさらに,⁠要求モデル」「開発支援」を加えた計3つの評価対象が含まれています)⁠

④オリジナリティ

オリジナリティは,新しい試みや日常の開発で出来ないことにチャレンジしたチームを評価するために設けられた審査対象項目です。上述した「追加課題」と同様,審査においてはこちらもオプション扱いになります。

図7 2011年大会のモデル審査基準の構成

図7 2011年大会のモデル審査基準の構成

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開発支援は,昨年は性能モデルを評価するための審査対象となっていましたが,今年からは追加課題に変更されました。

総合評価

ETロボコンでは,当初,モデルと走行結果を別々に表彰してきました。しかし,モデルだけ,あるいは走りだけに傾倒するチームが各部門の上位を占めることが多くなり,2008年大会からは,本来の目的である「モデルと走行結果の両方がバランスよく達成されている」という総合力の評価を導入しました。従来の,モデル部門,走行部門それぞれの表彰も行っていますが,大会の最終的な評価は,総合部門の順位で決まることになっています。

具体的には,モデル審査結果と競技の走行結果を,最低点を0,最高点を1として,それぞれ0から1の間に分散させ,それら2つの値の調和平均を取ります。調和平均を用いるため,一般的な平均(相加平均)だと同じになる場合でも,2つの値の差がより少ない方が高い値になります。つまり,モデル審査結果と競技の走行結果の平均が同じ場合でも,モデルだけ良かったり,走りだけ良かったりするチームより,モデルと走りが同程度のチームの方が総合評価では高い値を得ることになります。

この総合評価方式を採用してからは,徐々にモデルと走行結果がバランスされたチームが増えてきているように感じます。

図8 正規化後のモデル審査結果(2010年チャンピオンシップの総合評価結果)

図8 正規化後のモデル審査結果(2010年チャンピオンシップの総合評価結果)

著者プロフィール

渡辺博之(わたなべひろゆき)

株式会社エクスモーション。本部審査委員長。

毎年夏から秋にかけては,定例となった全国各地のロボコン行脚で,昨年などは子供の学校行事にどれも参加出来ず,不憫な思いをさせております。それでも,各地で意気込みあふれるモデルと出会うのが楽しみで,気がついたら審査委員生活10年目です。

今年も,みなさんの力のこもったモデルをお待ちしております。