「中の人」が語るETロボコンの魅力─何が面白いのか,何に役立つのか

第3回 ロボコンに賭けた「思い」も伝わる─ETロボコンのモデルとは?

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3.5 分

モデル作成のポイント

これまでのモデルの傾向

ここでは,これまでのモデルの傾向を振り返りながら,より評価の高いモデルを作成するためのポイントをお伝えしたいと思います。

以下に,第1回大会から第9回大会までのモデルの傾向を示します。

図9 過去大会におけるモデリングの変遷

図9 過去大会におけるモデリングの変遷

これを見ると,最初は単なるライントレースだけだったコース課題が,年を追うごとにその数と難易度が上がり,それに伴ってモデルも進化してきているのがわかります。

最初はUMLによる設計モデルを中心としたものが多かったのですが,コース課題を走りきる必要性から,徐々に要素技術を盛り込んだ性能モデルが重視されるようになってきました。また,モデルの内容が濃くなるにつれて,妥当性を示すためのデータや可読性向上のためのサマリ記述など,モデルの可読性向上にむけての工夫も進んでいます。

良いモデルを作成するためのポイント

以上のことを踏まえ,モデルを審査する立場から,良いモデルを作成するためのポイントについて紹介したいと思います。

まず,ETロボコンのモデルは実開発と違い,コンセプトシートも含めてA3サイズ6枚に収める必要があるということに注意しましょう。当然モデル全部を掲載することは困難ですが,かといって一部だけを詳細に掲載しても全体が把握できなくなります。全体を俯瞰でき,かつ,重要な点についてはある程度まで詳細に記載するといったバランスの良さが求められます。

また,審査されるということを考えると,モデルを読みやすく,内容を理解しやすくするといった点にも注力することが重要です。前述したように,コンセプトシートの活用も有効です。ここでモデルのサマリや設計方針などを記述しておくことで,モデル自体の可読性が大きく向上しますし,残り5枚をモデルの内容だけに費やすことができます。

モデルの内容では,性能モデルと設計モデルのバランスが大事になります。

性能モデルでは,コース課題のクリアや走行性能を向上させるために必要な要素技術がきちんと記載されているかどうかが問われます。また,その際には,採用した技術や戦略などの有効性・妥当性もきちんと述べられていなければなりません。

設計モデルでは,性能モデルで記載された要素技術や戦略を,ソフトウェアとしてどのように実現しているかが問われます。特にETロボコンでは,ソフトウェアとして正しく動作するだけではなく,将来の拡張や修正が容易なように,ソフトウェアの内部がきちんと整理・整頓されて作られているかという点が重視されます。設計モデルでいえば,特に構造面のモデルのできがカギとなります。

ETロボコンのこれまでとこれから

ETロボコンも,いよいよ10年目を迎えます。

これまでの9年間を振り返ると,ETロボコンは運営側と参加者側の双方に対し,モデリングという面で大きな成果をもたらしたと言えます。

まず,参加者側への貢献としては,この9年間でのモデルの進化が挙げられます。多くのチームがロボコンに参加することでモデリングの腕を磨いてきました。特に,ここ数年の大会における上位入賞チームのモデルは,可読性・内容ともに,そのまま実際の開発現場に持ち込めるような,非常に高品質なモデルとなっています。

また,最近では,日常の開発では取り組むことのできないような新たな試みを持ち込むチームが増えています。SysMLの要求図やSPLのフィーチャー図を使った要求の表現,Simulinkなどの連続系モデルを取り入れたハイブリッドなモデリング,継続的な取り組みを効率化するためのSPL開発,そして専用のモデリング言語と開発環境を構築したDSM開発など,まさに組込み・リアルタイム分野において,これから期待される技術ばかりです。これは,ETロボコンがモデリングの教育のための「砂場」にとどまらず,最新技術の「実験場」としての役割を期待されていると言えます。

また,運営側では,これまでの上位入賞チームのモデラーが,モデル審査委員や技術委員など運営側に参加することで,ETロボコンの輪を大きく拡げてきました。今や,各地区独自の教育やモデル審査などは,それらの地区審査委員の方々が主体となって進めています。第1回大会の審査は,会場の片隅でたった3名で実施されたことを考えると,ETロボコンを通した「モデリングの輪」のすごさをあらためて感じずにはいられません。

2002年第1回UMLロボコン時の会場でのモデル審査風景

2002年第1回UMLロボコン時の会場でのモデル審査風景

1つの区切りとなる今年の10回大会は,これまでのライントレースの集大成となります。各チームのモデルにも,これまでの知見が存分に発揮され,非常に見応えのあるものになることが期待されます。

2010年ETロボコン・チャンピオンシップ会場に掲示された参加チームのモデル図

2010年ETロボコン・チャンピオンシップ会場に掲示された参加チームのモデル図

そして11年目となる来年からは,課題が大きく変更される予定です。現在は,まだ協議中ですが,こちらもぜひご期待ください。

著者プロフィール

渡辺博之(わたなべひろゆき)

株式会社エクスモーション。本部審査委員長。

毎年夏から秋にかけては,定例となった全国各地のロボコン行脚で,昨年などは子供の学校行事にどれも参加出来ず,不憫な思いをさせております。それでも,各地で意気込みあふれるモデルと出会うのが楽しみで,気がついたら審査委員生活10年目です。

今年も,みなさんの力のこもったモデルをお待ちしております。