OSSデータベース取り取り時報

第3回 MySQL最新バージョン 5.7リリースとPostgreSQL 9.5 Beta 1リリース

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2015年10月にはMySQLの最新バージョン5.7が製品版となったほか,PostgreSQLも次期メジャーリリースの9.5に向けたベータバージョンがリリースされました。今回はこれらの新バージョンや関連セミナーについてご紹介します。

オープンソースカンファレンス 2015 Tokyo/Fall

2015年10月24日,25日の2日間にわたり開催されたオープンソースカンファレンス(OSC)2015 Tokyo/Fallは,全国で開催されるOSCの中でも最大級の規模であり,データベースに関するセッションも豊富にありました。

日本MySQLユーザ会は,イベント直前に製品版がリリースされたMySQL 5.7に搭載された最新機能についてMySQL 5.7で遊んでみようというセミナーで紹介しました。

日本PostgreSQLユーザ会からは,新バージョン9.5の機能紹介,株式会社アシストからは実運用のノウハウ,SRA OSS,Inc 日本支社からはPostgreSQL専用クラスタツールのpgpool-Ⅱがそれぞれ紹介されました。またNoSQLとしては,Neo4jユーザ会からグラフデータベースの最新事情についての紹介セッションがありました。

本記事の冒頭にもありましたように,MySQLおよびPostgreSQLそれぞれ新バージョンのリリースが着実に進み,市場としてもOSSのDBへの関心度は高くなっています。当日の講演資料はOSC2015 Tokyo/Fallのトップページに掲載される予定ですので,お聞き逃した方はそちらで最新情報をチェックされてはいかがでしょうか。

[MySQL]2015年10月の主な出来事

MySQLの最新メジャーバージョンであるMySQL 5.7が2015年10月19日にリリースされました。MySQL 5.7では大幅な性能向上を含む数多くの改良が行われており,新機能や主な改善点は200項目近くにのぼります。MySQL Community Teamにてまとめた新機能および改善点一覧は,日本のMySQLコミュニティによって翻訳もされています。

MySQL 5.7では,パーサやオプティマイザのリファクタリングによる性能向上とより柔軟なデータアクセスに加え,GIS機能を独自実装からBoost.Geometryベースに置き換え,セキュリティ関連機能の改良などが行われています。またレプリケーションに関しては,複数のサーバから1台にデータ変更点を集約できるマルチソースレプリケーションやスレーブでのデータ変更性能を向上させ遅延を抑制するマルチスレッドスレーブをはじめとして,多数の実用的な機能が追加されています。さらにMySQL Labs(実験室)では,複数のMySQLサーバをレプリケーションのマスターとして,マルチマスタ構成が実現できるグループレプリケーションを開発中です。

MySQL 5.7 JSONサポート

最新のMySQL 5.7ではJSONデータ型およびJSON関数を実装しました。JSONデータ型はPostgreSQL 9.4のJSONB型と同様にJSON文字列をバイナリ化した形式で格納します。MySQL 5.7ではJSON関数を使うことでJSONドキュメント内のデータの参照や変更を行うこともできます。またMySQL 5.7で実装された生成列(Generated Column)と組み合わせることで,JSONドキュメント内のデータに対するインデックスの作成も可能です。

これによりRDBMSとドキュメントデータベースの両方の要件を持つアプリケーションから,MySQLのみを用いての運用を実現できます。さらに一部のドキュメントデータベースでは実装されていないACIDなトランザクションにももちろん対応しており,複数のドキュメントまたはドキュメントとテーブルを一つのトランザクションで変更することもできます。

MySQL Router

MySQLのレプリケーション構成に対して,アプリケーション側からはバックエンドの構成を意識しないで接続するためのツールがMySQL Routerです。今回のMySQL 5.7のリリースと同じタイミングでMySQL RouterもGAになりました。アプリケーションからはMySQL Routerに接続,バックエンドのMySQLサーバ群にはMySQL Routerが適宜接続やトランザクションを転送します。またMySQL Routerにはプラグインとしてフェールオーバー時に接続を自動的に切り替える機能やマルチマスタ構成の際にロードバランスする機能など,機能追加が行える仕組みを設けています。日本語での機能概要の説明はこちらです。

先月のMySQL関連イベントやセミナー,ユーザ会の活動のレポート

日本MySQLユーザ会 15周年記念パーティー

MySQL 5.7のリリースとほぼ同じタイミングで,日本MySQLユーザ会の15周年を記念するイベントが株式会社コロプラにて開催されました。なお,本イベントは原稿執筆時点では終了していないため,2015年11月の本連載にて詳細をご報告いたします。

MySQL 最新情報セミナー2015秋

MySQL 5.7のリリースを速報する位置づけでのセミナーが10月30日に開催されました。本記事の公開時点では東京開催分が終了していますが,11月4日 大阪,11月5日 福岡での開催,および11月9日 東京での追加開催を予定しますので,ぜひご参加ください。

[PostgreSQL]2015年10月の主な出来事

次期メジャーバージョンのリリースに向けて2015年10月8日にPostgreSQL 9.5 Beta 1が予定通りリリースされました。また同時に,セキュリティフィックスなどを含むPostgreSQL 9.0~9.4のマイナーバージョンアップも行われました。現在,2015年年末のPostgreSQL 9.5メジャーリリースに向けてテストが行われています。

PostgreSQL9.5 では,ユーザがアクセスするレコードを行単位で指定できるRow Level Security,大規模なテーブルから特定の範囲を検索するのに適したBRINインデックス,JSONB型に対する演算子や関数の強化,Spin Lockの削減によるスループットの向上など,機能面・性能面での改善が数多く含まれています。PostgreSQL9.5の概要と特徴の一覧はWhat's new in PostgreSQL 9.5にまとめられています。また,第2回でもご紹介しましたが,PostgreSQLのコア機能開発などもおこなっているNTTデータの澤田氏がPostgreSQL9.5の新機能紹介をしています。

先月のイベントやセミナー,ユーザ会の活動のレポート

第32回PostgreSQL勉強会

PostgreSQLを含む総合的な監視・運用ツールであるpg_monzの新バージョンの紹介と,PostgreSQL vs. MySQL の解説(デモ付)の2本立ての勉強会が株式会社サムライズムにて開催されました。

株式会社TISの中西氏による新しくなったpg_monzでPostgreSQLのクラスタを監視しようではpg_monzのバージョン2.0から強化されたクラスタ監視機能の紹介や他製品との比較,またVagrantでpg_monz+zabbixを自動構築するAnsibleのプレイブックが紹介されました。

JPUG中国支部支部長の曽根氏による2大OSSデータベースのMySQLとPostgreSQLの違い(前篇)⁠ / ⁠後編)ではMySQLとPostgreSQLのメリット,デメリットをもとに実務での使い分けや,両者の違いを講演者の経験も踏まえ説明しながら,実際の運用時のハマリどころ(罠)が紹介されました。

当日の様子の動画は後日,第32回PostgreSQL勉強会ページにて配信予定です。

著者プロフィール

下雅意美紀(しもがいみき)

TIS株式会社

TISが提供するOSSサポートサービスにおいてOSSのサポート業務に従事。日本PostgreSQLユーザ会(JPUG),PostgreSQLエンタープライズコンソーシアム(PGECons)といったPostgreSQL関連のコミュニティで積極的に活動しており,2014年度のJPUG感謝賞を受賞。


梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


佐藤千佳(さとうちか)

株式会社メトロシステムズ

Oracle Databaseに関する技術支援業務を担当後,OSSプロダクトを扱う専門チームに配属。現在はPostgreSQLのR&D業務を担当。PostgreSQLの技術者を育成するための教育活動にも力を入れており,近年はコミュニティ活動を中心に全国でPostgreSQLの講演を行っている。

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