OSSデータベース取り取り時報

第39回 Oracle OpenWorld 2018でのMySQL関連の発表,PostgreSQL 11リリース

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この連載では,OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーが,さまざまなオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

2018年10月に米国で開催されたイベント「Oracle OpenWorld 2018」にて,新しいMySQLクラウドサービスや新機能が複数発表されました。PostgreSQLは,最新のメジャーリリースであるPostgreSQL 11がリリースされました。

[MySQL]2018年10月の主な出来事

2018年10月のMySQLの製品リリースは,最新のメジャーバージョンに対するマイナーバージョンであるMySQL Community Server 8.0.13をはじめとして,MySQLサーバー 5.7, 5.6, 5.5やクライアントツール,MySQL Cluster 7.6から7.2までの各マイナーバージョンがいっせいにリリースされました。バグ修正だけでなく複数の機能追加や重要な変更も行われています。今回のマイナーバージョンでの要点は今後の本連載にて解説予定です。

さらにMySQL Clusterの次期バージョンとなる8.0.13 DMRがリリースされました。MySQL Clusterを構成するSQLノードがMySQL 8.0.13ベースとなり,今後はMySQLサーバーのソースコードツリーに統合され,リリースサイクルもMySQLサーバーに合わせる形となります。

2018年10月に米国サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorld 2018ではFacebook やTwitter, Booking.com, Uberや日本からもスクウェア・エニックスの事例講演をはじめ,MySQL開発エンジニアによるディープな技術セッションが多数用意されていました。

これまではJavaの祭典として開催されていたJavaOneは2018年からOracle Code Oneに名称を変更して,より幅広いデベロッパー向けのイベントと位置づけられています。デベロッパー向けのMySQLセッションとしては,NoSQL APIであるDocument Store関連が数多く提供されていました。

スクウェア・エニックスでのMySQL利用事例

Oracle OpenWorld 2018ならびにOracle Code One 2018のMySQL関連セッションとしてはスクウェア・エニックスが唯一の日本人による講演でした。Oracle Code One 2018開催3日目となる水曜日の注目セッションとしても取り上げられました。非常に多くのMySQLサーバーを運用し,またレプリケーション機能を活用してディザスタリカバリ構成を構築していることなどが紹介されていました。さらにオンラインゲームに世界中から同時にアクセスするプレーヤーのためのデータ管理が要件となっており,MySQL開発チームへの期待として語られていました。講演終了後にはスクウェア・エニックスと同様に世界的に有名なゲームメーカーのエンジニアからの質問もあり,最後まで盛り上がりを見せた講演となりました。

MySQL Enterprise Editionのデータマスキング機能

商用版のMySQL 8.0.13ならびに5.7.24から利用できる機能として,データマスキング機能とテスト用のランダムデータ生成機能が発表されました。データマスキングはクレジットカードや電話番号の一部を隠蔽または匿名化して利用するなどの用途があります。また多くのセキュリティ標準や法規,企業でのセキュリティポリシーで要件となっています。データを匿名化することでデータ保護の安全性の向上が期待できます。

MySQLのデータマスキングでは,クレジットカードなどの定型的なデータのマスキングやユーザがルールを定義してのマスキングが可能となっています。対象となる文字列の一部や先頭と末尾をxなどの特定の文字で置き換えることや,文字列のフォーマットは維持しながらランダムな文字列で置き換えることが可能です。給与などを隠蔽するために数値データの範囲を変えることもできます。この他ユーザーが置き換えのルールを定義したり,事前に指定したブラックリストに該当する場合のみマスキングを行うことも可能となっています。

ランダムデータ生成機能は,単にランダムな値を生成するのではなく,たとえばクレジットカードであればチェックサムを算出するLuhnアルゴリズムをふまえた値の生成が可能です。他にも米国の電話の仕様にあわせたデータやユーザがルールを定義しての生成が可能となっています。これによりアプリケーションのテスト時により実際の状況に近づける事が可能となります。

新しいMySQLベースのDatabase as a Service

Oracle OpenWorld 2018ではMySQL Enterprise Editionをベースとした新しい世代のDatabase as a Serviceが発表されました。通称はMySQLaaS(MySQL as a Service)とされています。従来のOracle MySQL Cloud Serviceは仮想化プラットホームを上でMySQLサーバーを動作させていました。また高可用性構成はユーザが手動で設定する必要があり,マネージドサービスとは呼びづらい部分がありました。

新しいMySQLaaSはベアメタル・クラウドのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)に統合され,高可用性や自動拡張を含めて利用や運用をより省力化できるサービスとなります。もちろんベアメタルならではの高い性能も期待できます。また運用の多くを自動化する方向で開発が進められています。

2018年5月のMySQL Innovation Day Japanでも概略が紹介されたMySQL Analytics Serviceはこの新しいMySQLaaSのオプション機能として提供される予定である旨が発表されました。今回の講演ではMySQLとRAPIDノードを組み合わせたベンチマークの結果や開発中の環境を利用してのデモが行われました。

[PostgreSQL]2018年10月の主な出来事

2018年10月8日にPostgreSQL 11がリリースされました。今回のリリースでは,PostgreSQLでビッグデータを取扱いできるよう,巨大なデータベースや,高い計算負荷を要求される場合に役立つ機能追加が目立っています。テーブルパーティショニングの大幅な改善,パラレルクエリの拡充,一部のDMLの並列化サポート,JITコンパイル導入などがそうです。

他にもストアドプロシージャ内でのトランザクション制御が可能になるなどの新機能,ユーザのリクエストに基づく機能改善など,多くの機能追加が行われております

次のメジャーリリースはPostgreSQL 12になり,PostgreSQL 11の次のマイナーリリースはPostgreSQL 11.1となります。

PostgreSQL 11の主な新機能
  • パーティショニングにおける堅牢性とパフォーマンスの強化
  • ストアドプロシージャにおけるトランザクションのサポート
  • パラレルクエリの拡充
  • ジャストインタイム(JIT)コンパイル
  • 一般的なユーザーエクスペリエンスの向上

PGECons勉強会開催

2018年10月18日に第2回PGECons勉強会が開催されました。今回はPostgreSQLの標準ベンチマークツールpgbenchと,パラレルクエリがテーマでした。

前半のpgbenchでは使い方についての紹介があり,リリースされたばかりのPostgreSQL 11のベンチマークにも役立つ情報が紹介されました。後半のパラレルクエリでは,パラレルクエリの基本を発展の歴史も含めて紹介され,PostgreSQL 11での改良点も紹介されました。

PGECons(PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム)のサイトにて資料が公開されておりますので,興味のある方はご活用ください。

2018年11月開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

オープンソースカンファレンス 2018 Niigata

日程 2018年11月10日(土)11:00-17:30
場所 ほんぽーと新潟市立中央図書館 3F 多目的ホール
内容 オープンソースのコミュニティや協賛企業,後援団体によるオープンソース関連のセミナーや展示などをお楽しみいただけます。MySQLとPostgreSQLに関する講演,JPUG新潟支部のブース展示が予定されています。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

オープンソースカンファレンス 2018 Shimane

日程 2018年11月23日(金・祝)10:00-17:30
場所 松江テルサ 4F中会議室(島根県松江市・JR松江駅前)
内容 オープンソースのコミュニティや協賛企業,後援団体によるオープンソース関連のセミナーや展示などをお楽しみいただけます。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL 8.0 バージョンアップ対策セミナー

日程 2018年11月1日(木)
場所 日本オラクル株式会社 本社
東京都港区北青山2-5-8
内容 MySQL 8.0では,データベースオブジェクトに関する情報がInnoDBで構成されるデータディクショナリに格納されるなど,MySQL 5.7以前から変更されている点があります。このセミナーでは,MySQL 8.0のデータディクショナリに関する解説や,バージョンアップのための事前準備,バージョンアップ時の注意事項などを解説します。
※MySQL 5.5のExtended Supportは2018年12月に終了します。せびこの機会にバージョンアップについてご検討ください。
主催 日本オラクル MySQL GBU

MySQL Innovation Day 2018 秋

日程 2018年11月21日(水)午後
場所 AP新橋(新橋駅前)4F セミナールームD
東京都港区新橋1-12-9
内容 2018年10月22日~25日にサンフランシスコで開催される「Oracle OpenWorld 2018」ならびに「Oracle Code One 2018」で発表されたMySQL最新情報を日本でフィードバックするセミナーです。MySQL開発チームを率いるTomas UlinやレプリケーションチームのリーダーLuis Soares, セキュリティ機能のプロダクトマネージャーMike Frankが来日し,MySQL 8.0のリリース以降に追加された新機能やMySQL 8.0以降の製品戦略をご紹介予定です(同時通訳あり)⁠
主催 日本オラクル MySQL GBU

PostgreSQL Conference Japan 2018

日程 2018年11月22日(木)
場所 AP八重洲通り
東京都中央区京橋1丁目10番7号 KPP八重洲ビル
内容 PostgreSQLの国内総合カンファレンス。PostgreSQLに関わる方がさらに知見を深めるのにはもちろん,PostgreSQLの知識をこれから得たいという方にも最適なコンテンツが予定されています。
主催 日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)

第25回 中国地方DB勉強会 in 鳥取(倉吉)

日程 2018年12月1日(土)
場所 コワーキングスペース SUIKO WORK CAMP
鳥取県倉吉市山根645-2
内容 中国地方の各地でデータベースに関する勉強会を開催している中国地方DB勉強会が鳥取会場で開催する勉強会
主催 PostgreSQLユーザ会中国支部

著者プロフィール

山本文彦(やまもとふみひこ)

TIS株式会社

アプリ兼インフラエンジニアとしてさまざまなECサイトの開発現場を担当後,現在はOSSサポートサービスにおいて技術コンサルティングや保守サポートに従事。PostgreSQLだけでなく,MySQL, OracleなどのRDB,Amazon DynamoDBといったNoSQLなどさまざまなDB製品の利用経験を活かして,OSS製品の普及活動に力を注いでいる。


梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。

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