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第11回 日本のSI業界にもディスラプションの予感!? cloudpack×インフォテリアのデータビジネスが意味するもの

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見えてきたパートナーシップの新なた形

AWSクラウドの事情に詳しい方ならご存知でしょうが,cloudpackは国内はもちろん,世界的に見てもAWSクラウドのインテグレータとして非常に高い評価を受けている企業です。AWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent」では毎年,AWSのパートナー企業の中でも最上位のコンサルティングパートナーである「AWSプレミアコンサルティングパートナー」を発表していますが,第1回の「re:Invent 2012」以来,5年連続でプレミアコンサルティングパートナーに選ばれている企業は国内ではNRIとcloudpackのみです。

参考までに,AWSはプレミアコンサルティングパートナーの認定条件として「APNコンサルティングパートナーの中でも世界トップレベルであり,AWSを使用した業務に一定以上の実績を上げ,AWSでの顧客ソリューションのデプロイに豊富な経験を持ち,トレーニングおよび認定済み技術コンサルタントが多数在籍し,少なくとも1つのAPNコンピテンシーを持ち,プロジェクト管理の専門知識を持ち,AWS関連のコンサルティングビジネスの構築によって健全な収益を上げて」⁠AWSサイトより引用)いることを課しています。この条件を5年連続でクリアしているだけでも,cloudpackの実力と実績がうかがい知れます。

クラウド導入の成功に欠かせない存在として,クラウドを熟知したパートナー企業が挙げられます。逆にクラウドに関する知識がや実績がないSIerに任せたばかりに失敗に終わったプロジェクトは枚挙に暇がありません。しかし多くのユーザ企業は既存のSIerとの付き合いを優先する傾向にあり,cloudpackのようなクラウド専業のSIerは,ふだん自分たちが会話しているSIerとは大きく異なる存在に見えがちです。また,cloudpackが手がけてきたような先進的なクラウドのユースケースはクラウドに移行する以前の課題を多く抱えている(と思っている)企業にとって,別の世界の出来事のように見えるのではないでしょうか。

そしてcloudpackもまた,既存のSIerのビジネスを大きく壊すような営業やプロモーションはせずに,彼らのヘルプとしてインテグレーションの一部を担当するケースが少なくありませんでした。先進的な事例を担当する機会には恵まれていても,"一般の企業の,一般のデータと一般のシステム"を直接目にすることは多くはなかったのかもしれません。実際,後藤氏は今回の提携において,⁠インフォテリアのユーザのデータを見ていくうちに,一般の企業において"日々の業務で生まれているデータ"がどういうものであるかを知った。そうした日々のデータをクラウド上で整形するのにASTERIA WARP Coreは非常に向いている」と語っています。

発表を行ったcloudpack後藤和貴氏(左)とインフォテリア熊谷晋氏

発表を行ったcloudpack後藤和貴氏(左)とインフォテリア熊谷晋氏

一方,中堅から大企業向けのパッケージビジネスのイメージが強いインフォテリアもここ数年はクラウド事業にフォーカスしており,AWSとの関係性も強めています。とくに今回のcloudpackとの協業でもメインとなったRedshiftやRDS関連には力を入れており,ASTERIA WARPの標準機能としてこれらのサービスに対応しています。また,AWSから国内の「Amazon Redshiftパートナー」⁠データ統合パートナー」としてはじめて認定された実績をもち,AWSと協力した大規模プロジェクトも展開しています。そして今回,インフォテリアはcloudpackとの協業にあわせて新たなパートナープログラム「ASTERIA Subscription Partner」を発表しました。これはASTERIA WARP Coreに特化したプログラムで,パートナー企業にASTERIA WARP Coreを販売してもらうだけでなく,パートナー企業が自社商材,たとえばcloudpackのようなインフラ構築/運用スキルを含むコンピテンシーをASTERIA WARP Coreと組み合わせ,データ連携領域をカバーしながら「⁠パートナーの)自社商材を強化するパートナーシップ」として展開していくとしています。

インフォテリアはこれまでパートナー企業にも大手SIerが多かったのですが,クラウド型の連携が中心となるサブスクリプションプログラムであれば,クラウドインテグレータや小規模なISVにまでパートナーのレンジを拡げることが可能になります。⁠インフォテリアにとってもパートナー企業にとっても付加価値を高めるパートナープログラムに成長させたい」という熊谷氏の言葉は,既存のSIビジネスの慣習に従っているだけではクラウドファースト時代へのが難しくなっていることを示しています。なお,cloudpackはASTERIA Subscription Partnerの最初のパートナー企業となっています。

インフォテリアが新しく発表したサブスクリプションパートナープログラムは大手SIerだけでなく,クラウドインテグレータや独立系ISVにも門戸を開く。

インフォテリアが新しく発表したサブスクリプションパートナープログラムは大手SIerだけでなく,クラウドインテグレータや独立系ISVにも門戸を開く。

日本のSIビジネスは世界的に見ても非常に特殊だと言われています。筆者は外資系企業のエグゼクティブが「ユーザがSIerの言うことしか聞かない」と嘆いているのを何度も聞いたことがありますが,クラウドの普及が進むにしたがい,これまでのSIerのやり方では通用しないと気づいたユーザ企業は確実に増えているようにも見えます。AWSクラウドの世界的トップインテグレータと,国内企業のデータのかたちを知り尽くした大手ソフトウェアベンダ,両者の提携は単にIT業界によくあるパートナーシップ強化にとどまらず,互いのクラウドビジネスに足りなかった部分を補完しあいながら,国内企業のクラウド導入とSIビジネスのあり方に大きな変化をもたらす可能性を秘めているといえそうです。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。

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