禅で学ぶ「エンジニア」人生の歩き方

第11回 過程と結果

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禅語「真玉泥中異」

ランク:中級 カテゴリ:職場にて

「しんぎょくでいちゅうにいなり」と読みます。

真玉とは,宝石のことです。個人的には「大きな真珠」とかそんな感じのパールホワイトが,コントラスト的にも綺麗なイメージがあって好きですね。
⁠泥の中にあっても,宝石は泥にはならず,宝石のままである」という意味合いの言葉になります。相も変わらず「ごくあたりまえ」の禅語です。

この言葉と対になって筆者が思い出すのが「朱に交われば赤くなる」という言葉なのですが。
この「朱に交われば赤くなる」という言葉を,私達はつい「自らの言い訳」として使ってはいないでしょうか?

こんな所にいるから私は評価されないんだ。
こんな場所だから芽が出ないんだ。
別の場所にいけば,もっとあたしらしいあたしになれる。
周りがこんなんじゃなければ,ぼくはもっと凄いんだ。
程度の低い連中ばかりば周りにいるから自分も駄目になっちゃうんだ。

だから,⁠ここ⁠から移動すれば,きっとうまくいくはずなんだ!!

でも。
それは,本当でしょうか?

移動すれば,本当に「芽が出て」⁠評価されて」⁠凄い自分になれる」のでしょうか?

もちろん,一つの方法として「その場所から移動する」ことが,とても大切なことも多々あります。いわゆる「ブラックな企業」さんとか。そこに意味もなくしがみつくのは,文字通り「命を削る」選択肢になりかねませんし,そんなところに「いなさい」と言うつもりは1bitたりともありません。
強い意志を持って「逃げる」という選択肢を,むしろ全力でお薦めいたします。

ただ。
もし「今の場所から移動したらきっともっと何かいいことがあるんじゃないか」という弱い動機であるのであれば。

もう一度,移動することについて真剣に向き合って考えてみてもよいのではないでしょうか?

「今の場所では絶対にできない」&&「移動したら絶対にできる」の式の結果は。それは,本当にtrueですか?

真玉泥中異。

泥の中にどれだけかいても,玉はその輝きを失うことはありません。

「今自分がいる場所と周り」のせいにするのではなくて。
自らが持つ本当の輝きを,もっと信じてみてはいかがですか?

禅語「竹影掃階塵不動」

ランク:上級 カテゴリ:スキルアップ

「竹影掃階塵不動 月穿潭底水無痕」と続き,これは「ちくえいかいをはらってちりうごかず,つき たんていをうがってみずにあとなし」と読みます。

月明かりに照らされた中。
竹は風によって揺れ。竹の影はまるで塵を掃いているように見えるのですが,塵はぴくりとも動きません。
水面に映る月は,まるで池底まで穴をうがつかのように写ってますが,水には微かな波紋さえありません。

晩秋の夜中,とか勝手に連想してみたりするのですが。
情景としては非常に美しいですね。ここで絵心の一つもあれば,是が非にも絵にしてみたいところです(絵心が皆無なことがあらためて悔やまれます⁠⁠。

この美しい禅語は,我々に何を語りかけてくるのでしょうか?

過去において。さまざまに素晴らしい「何か」が,きっと皆さんもおありだろうと思います。
未来への目標を高々と掲げて,それに向かって努力をされているかたも多かろうと思います。

偉大なる金字塔を打ち立てた業績を軽んじるつもりはないのですが。
⁠目標に向かう努力」を否定するつもりはないのですが。

ただ。

時々,それにとらわれている人が見受けられるように思うのですが……みなさまはどうでしょうか?

過去の栄光は。
その栄光そのものではなくて「そこにたどり着くまでのさまざま」が素晴らしいのです。

たどり着いてしまえば,待っているのはその次。第8回でやりましたが,百尺竿頭須進歩,でございます。⁠過去の成功なんて角砂糖一個の栄養もない」とおっしゃった,漫画に出てくる女社長さんもいらっしゃいました。

未来へ向かう目標は。
⁠切磋琢磨するための道具」であればよいのですが……いつのまにやら本末転倒,⁠目標をクリアすること」そのものに主眼を置きすぎてしまい,大本の「なぜその目標を立てるに至ったか」という根底部分をすっかりと失念してしまうケースが,なきにしもあらずかと思うのですがいかがでしょうか?

竹影掃階塵不動 月穿潭底水無痕。

竹影は月は,何の痕跡も残しません。
でも,それを見たあなたの心には,きっと大きな痕跡を残しますよね?
そうしてそれは「⁠⁠あなたの心に痕跡を残すために⁠竹影が動き月が水面に映る」わけではないですよね?

誰かの周りの業績の評判のためではなく。
ただただ無心にひたすらに「努力を積み重ねる」大切さもあるかと思うのですが,いかがでしょうか?

著者プロフィール

がる

こなしている職業を語ると「……で,何屋さん?」と聞かれる,経歴が怪しいエンジニア。「知のコラボ」とか「シナジー」とかって単語で上手に糊塗してみたい。